電磁界解析の精度が悪いときに確認すること一覧【主にFDTD法】

はじめに

電磁界解析の結果が実測値と合わないことが多々ある。そういう時に、ここを確認すると良いというポイントを紹介する。(私の経験をベースにしているので、すべてのモデルや解析条件で当てはまるわけではないことには注意してください)

私はいくつかの電磁界解析ソフトを扱ってきており、その手法(FDTD法、FEM、モーメント法、それらの組み合わせや派生など)もソフトによって様々。しかしここ数年はFDTD法メインでやっているので、基本的にはFDTD法の話だと思って聞いてほしい。ただ、根本の考え方はどの手法であっても通じるものがあるとは思う。

メッシュがちゃんと切れているか確認する

解析をするにあたり、まず初めに解析モデルを作成する必要がある。これは、内蔵CADで自作したり、既存のCADデータをインポートしたりすると思う。この時、ソフトウェアのGUIでは作成したCADモデルが美しい形状や色で表示されているはずである。しかし、計算に使用するのは表示されているモデル形状そのままではなく、それを切ったメッシュの情報である。FDTD法であれば、直行メッシュで切ったYeeセルの情報が計算に使用される。

そのため、正しく計算が行われるためには、正しく(というか期待通りの)メッシュが切られていることを最初に確認する必要がある。もし、メッシュサイズがモデルに対して粗すぎたり、逆に細かすぎたりすると予期せぬ結果が帰って来ることがあるので、きちんとメッシュを設定し直そう。

特に、アンテナの給電ポイント付近や、アンテナエレメントを形成しているメッシュは少しの変化が解析結果に大きく影響するので要確認。

最近のソフトは専門知識のないユーザーでも使えるように、最初からメッシュが自動的に切られることも多い。この場合、ユーザーがメッシュを確認するためには何かソフト上での操作が必要になる。

モデルの電気特性を確認する

電磁界解析の解析モデルには、誘電率や導電率、誘電正接などといった電気特性が設定されていると思う。これが正しく設定されているかいま一度確認しよう。

解析ソフトの操作に慣れてくると、この辺の設定を流れ作業でやってしまって変な値を設定していることがたまにある。よくあるのは、金属のつもりで設定したモデルが空気になっていたり、その逆だったりだ。自分が情けなくなるミスだが、実際は結構な頻度で発生するから困る。

解析時間が妥当か確認する

これは特にFDTD法に関してだが、時間領域の解法では解析結果が収束(ある程度)するまで計算する必要がある。例えば、1Hzの解析結果を得たいのに、時間領域で0.1秒までしか計算していなかったら結果がおかしくなることは想像できると思う。(この場合でもソフト上では何かしら結果が出てしまうからたちが悪い)

経験的には、いい具合に収束させようと思ったら解析周波数の1つの波(電磁波)がモデルを3往復以上するくらいの時間は計算したい(ただし共振性の高いモデルとかだとまた変わってくる)。FDTD法の解析ソフトの場合は、タイムステップ×計算するステップ数、などで計算終了時間を任意に設定できることが多い。

実測環境をちゃんとモデル化できているか確認する

ここまでのことをちゃんと確認しておけば、頓珍漢なモデルで解析していることはなくなると思う。それでも実測値と合わない場合は、そもそも実測環境をちゃんとモデルに落とし込めているか確認しよう。例えば、アンテナを設置する際の台座とか、給電ケーブルとか、その他のオブジェクトの影響が入っていることが考えられるかもしれない。

このような解析モデルと実測環境の差異をリストアップし、それを使って解析結果と実測値の誤差を説明するのが定番のまとめ方(落としどころ)である。