高配当ETFは本当に相場の下落に強いのか(コロナショックで見る)

以下の3つの高配当ETFの値動きを、コロナショック~2022年1月の期間でTOPIXおよび日経225と比較し、コロナショックでの落ち込みと戻り幅を確認する。

  • (1489)日経高配当株50ETF
  • (1577)日本株高配当70ETF
  • (2529)株主還元70ETF

それぞれの商品の概要は以下となる。

銘柄148915772529
対象指標日経平均高配当株50指数野村日本株高配当70野村株主還元70
銘柄母集団日経平均採用銘柄全上場銘柄
全上場銘柄
構成銘柄数507070
決算回数年4回年4回年4回
信託報酬率年0.28%年0.32%年0.28%
想定分配金利回り3.9%3.6%2.6%

そして、3つのETFとTOPIXおよち日経225を比較したチャートは以下となる。

白:TOPIX
グレー:日経225
赤:1489
青:1577
緑:2529

コロナショックでの落ち込みはだいたいどれも同じくらいに見える(若干高配当ETFの方が落ち込みは深いか)。つまり、高配当ETFが特別相場の下落に強いということは言えない。ただ、さらに、コロナショック後の戻りも高配当ETFは遅い。

高配当ETFなので、配当の利回りがこの戻りの遅さを上回っていれば問題ない事になる。高配当ETFの配当利回り(大体2.5~4.0%)と、TOPIXおよび日経225の日本株ETFの配当利回り(だいたい1.5%程度)の差は1~2.5%である。TOPIXと日経225との差はどの時期の値を基準にするかで変わるので明確に示すことはできないが、この2つにそこまで大きい差はないと言っていいだろう(グラフ上では数%~10%の差があるように見えるが、基準日によってかなり変わる)。そのため、長期的に見れば配当金の差額が効いてくるかもしれない(高配当ETFの方が得をするかもしれない)。

しかし何れにせよ、高配当ETFが相場の下落に特別強いわけではない。あくまで上場している銘柄の中から高配当のものを寄せ集めたセット商品というだけで、「下落に強い」銘柄を集めていることにはなっていない。(ただ、TOPIXや日経225と比較してそこまで差がない事から、「強い」と表現しても問題ないレベルかもしれない)

このような高配当ETFの特徴やメリットの紹介で、「相場の下落に強い」とか「下落に強いと言われている」などと謳われていることが多い(というかほとんど)が、コロナショックによってそんな事実はない(ように見える)事が実証されたとも言える。